〜 5話 〜 「 負けず嫌い 」






 どんよりしたドス黒い雲からはついに大雨が降り出し、風が吹き始めていた。

 そんな天気をよそに、 黒帝生徒会室では写真争奪戦が繰り広げられていた。



 「返せ。」

 

 「いやだと言ったらどうなるんや?」



 「が壁に貼り付けになるだけだ。」



 「おぉ 怖いなぁ〜」



  先ほどから、この繰り返し。しかしは本気だ。

  しかし他の役員がいるために手はまだ出していない。



 「ゴホンッ。紅林先輩。久遠会長。いい加減、席についてください」

  がしびれを切らし、席に着くように促す。



 「・・・。」

 

  しぶしぶと言った様子で席に着く、



 「本題に入ります。」



 

  今回の会議は、 来月に待ち受けている4泊5日サバイバル林間学校

  についてである。

  日程、場所、内容行事など生徒会には様々な仕事がある。

  白帝と黒帝は生徒による自治意識が高く、理事側は放任主義。

  

  性格こそ、多種多様の両校の生徒会だが武力・頭脳においてはトップを誇るため

  学校は均衡をたもたれている。

  やる時にはやる。それが両生徒会のモットーである。

  顔はいい、強い、さらに頭まで良いと来たら人気を得ないはずがないが・・。



 

 「林間学校なんて行事予定にはいってましたっけ?」


  首をかしげているのは、さっきまで居眠りをいていた



 「裏行事だから表の予定にはのらないわ」


  げんなりした様子の



 「まぁ こんなものか? 決めないといけないものは・・」



  パラパラと5センチはあるかと思われる書類の束をめくっていく

  ちなみに会議にかかった時間は 15分ジャスト。

  流石はやる時はやる。がモットーの生徒会である。



 「これをしおりにしてわけないといけませんね」



  と。懸命に必要な部分をかいつまんでプリントの案を作っている



 「。 我のノートを取ってくれ」

 

  の言うノートとは、愛用のノート型パソコンのことである。



 「ほらよ。 今つくっちまうのか? しおりとやらを」

 

 「外を見てみろ。この状態では我はここにいるほうが良いと考える」


  外は、大雨・暴風。

  午前中のまだ青空が広がっていた天気がウソのようだ。



 「あぁー じゃぁ 会議はこれで終わりだな。 解散っと〜」



 「ぇ あー 雨!? 洗濯物干しっぱなしだった・・・・」



 「って おいまじかよ。 、朝天気予報で言ってたぞ」



  と、勝ち誇ったように言う



 「教えたのは、我だがな。」

  

  パソコンでしおりを作りつつ、口をはさむ



 「ふ〜〜ん ちゃんも結局忘れそうになってるじゃない」



  ニヤリと笑った



 「〜〜 ッ」



  『ドスッ』 「ぐぇ」



 「「「(ぐぇ??!!)」」」



 「重たい・暑苦しい・見苦しい・ウザイ。 退け」

 

 「そんな酷いこと言わんとってぇ。 わい傷ついちゃ「勝手に傷ついていろ」



  即答の。 最後まで言えなかった



 「なんでなん? 何で皆冷たいんや?」



 「「(先輩)が悪んいんだ(ですよ)」」



 「そこでハモらんくてもえぇやん」



  出てもない涙をハンカチで拭うふりをする

 

 「ぁ 白帝の皆さんはどうします? 寮に帰りますか?」



  現状の把握に駆り出されていた、が帰ってきた。

  

 「まぁ この天気で帰るバカはいないと思うが・・」



 「これから、色々あったりするんだ。今のうちに仲良くなっておけ」



  パソコンから目を離さずに言う



 「実は、 私たちこの学校に閉じ込められてる状態なんですよ。

  なので今日はこのままここに強制待機ということなんです。

  じゃあっちからいろいろ持ってきますよ」



 「おっと。 オレも行くぞ 



   は、隣の部屋へ行き

   はプリント作成。

   消去法で残った

   気まずそうに円になって座っている。



 「ありました。 トランプとジェンガと・・罰ゲームつきすごろくが」

 

  の手には、暇を持て余す者たちのオモチャが・・・



 「こちらも一段落ついたからな。 と だったか? 

  白帝のしおりもできているから、我らもあちらに行くぞ」



 「へ? 「行くぞ」 あぁ はぃ。」



  は驚いていた。

  自分はまだ最初のページすら終っていなかったのに

  黒帝の会長は両校分のしおりまで作り終わったと言うのだから。

  これでも自分は白帝の中では書類の始末は早いほうだったからだ。

  今度、書類の効率的な始末の仕方を教えてもらおうと思っただった。



 「何する?」



 「・・・。 ここは王道のトランプでいいだろう」



 「じゃ トランプの何やります?」



 「はーい! ババ抜きがいいなー。」



 「じゃ 会長わけるのよろしくお願いしますね」



  どさくさにまぎれて、にトランプを押し付けた

 

 「のトランプ技術はすごいものがあるからな」



 「・・・。」



  無表情でカードを切り続ける

  左の手から右の手にカードが飛ぶ。

  トランプを半部に分けパラパラっと混ぜた。

  散らばったかと思うと一つにまとまっているなど、神業的なカード技を

  連続していた。



 「うわ〜 すごいです。」

 

 「ほんとに、何で出来るのか不思議〜」



 「流石にボクもあれはできないなー…」



  とそれぞれが、感想を漏らしている間にの手からはカードはなくなり

  一人、ひとりの前に分けられていた。



 「分け終わったが? やるぞ」



 「誰からだ? やはりここはジャンケンか?」



 「そうやねぇ じゃ 右隣とジャンケンや」



  11人の少年少女が円になり、右隣とジャンケン。

  はたから見れば微笑ましいがやっている11人は真剣そのもの

  負けず嫌いがそろいにそろっている。



 「じゃぁ 始めますか。」



  から始まったババ抜き。

 

  −*−*ー



 「むぅ。どっちだ」



  残った者は 



 ちなみに一番は。二番は。と続いている。



 「はよぅ ひきいや?」



 「・・。 こっちだぁぁぁああ」



  の2枚の手札のうち、右がみつばの10。左がジョーカーである

  そして、のひいたカードは



 「ック。。 負けたわ」



 「うっしゃ。 へっへん 10番目ぬけぇ〜っと」



  勝利の女神はにほほ笑んだ。



  このあとも、 ジジ抜き・ポーカー・ブラックジャック

  と白熱したゲームが続いた。 



 「さっきから言おうと思っていたんだけど・・・」



 「何ですか?」

 

  思いつめたようにが言い出す。



 「がやたらめたらやったらに強いんですけど」



  と言った。 ちなみにさっきから1番はオンリーである。



 「確かに、一番はずっと 久遠会長でしたね。 それに

  紅林先輩は最初から負け続けてます。」



  勝ち続けていると負け続けている



 「・・。 お前仕込んだな。 自分に強い手札が回るようにと

  紅林に、弱いカードを回すの」



  ジトーっと 呆れた目で向かいにいるを見る

  

 「・・・・・何もやっていないが?」



 「えっとですねー 市原先輩の意見は一つ違うところがありますね。」


  と、が指摘をする。心なしか勝ち誇っているような顔をしている。

  

 「ほぅ。の弟か… だったか?」



  感心したように言う



 「それはですねぇ」

 

 「の手札を弱いカードになるようにしたのは本当だけど
  久遠会長自身の手札を強くなるようにしたことはないかな」



  スラスラっと ネタばらしをしたきらね。

  自分が言おうとしていたことをにすべて言われてしまった

  は唖然としている。



 「桐野か。 流石によく我の手際を見ていただけのことはあるな。
  我の仕込みに気づくのはだけかと思っていたがまだ読みが甘かったな。 
  それに・・今回の白帝にはそれなりの人材がいるらしい」



  ふっと口元に笑みを浮かべた

  しかし、その表情はすぐに一転する。



  『ギャァァァァアア』 『ウルルルルルルル』 『フシャァァアア』



  「何?蟲の声・・それも一体だけじゃない。 三体もいる」



   驚きを隠せない

   普段、蟲は単独行動をするのが一般的だ。

   しかし稀に小規模の集団を作り街を荒らす蟲もいる



 「。 行くぞ」



 「「「御意」」」



  4人の手元にはそれぞれ武器が握られている。



  が窓の手すりに手をかけて、飛び降りるとあとの4人も続いていく。



 「いってしもたな? わいらも行くんかいな?」

 

  走って行った5人の背中を見ながらに問う。



 「行くわよ。 皆、準備して」



 「久しぶりやぁ 蟲退治。」

 

 「遅れをとらないように行くわよ。…昇降口どこかしら」



 「って 僕らもその窓から行けばいいじゃないですか」



 「嫌!上靴のまま外に出るだなんて嫌よ。」



微妙なところで潔癖症な。ここら辺は乙女的な部分であろう。



 「・・・・・。(何この人。こんなキャラだったんだ・・・)」



 「なッ 何よその眼は。

  「この人・・ 今頃になってこんなキャラ出さなくても・・」 

   的な目線は。」



  大方あっているの予想。



 「んなところで押し問答してる場合じゃないよーッ」



  あわて始めた



 「はぁ。 もぅなんでもいいので行きますよ。」



  興味が失せたように歩き始めた空。

  

 「皆ぁ〜 行くわよ」



  に続き、走り出す5人。

  最後に走り出したは人知れず呟く



  

 「それにしても・・・ 蟲が集団で現れるなんて・・ あるであの時の

   再現みたいね。 何かの前触れか・・はたまた始まりなのかしら・・・」



  の呟きを耳にしたものはいない。
  
  
  
  
  
  
  
  
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