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「ていうか、結局意味なかったんじゃないの・・クジ引き。」
いつのまにか、スタートは別々だったはずなのに
何か引き寄せられる力がるのか全員が集まっていた。
・・・ を除いて。
「まぁ まぁ深く言わんといてや 」
「・・ 雰囲気だけでも楽しみたかったんですよぉ」
の必殺技ウルウル上目使いがにヒット。
うッと息をのんで、「べ。別にいいわ」と一言。
の必殺技は、さえも抑えてこんでしまった。
・・おそるべし 。
「・・どうやら、我達は誘われているらしいな。」
「・・みたいですねぇ。 こんな安物っぽい罠になんかに
かかるかって話なんですけどねぇ」
「どういうことだよ?」
と干弥の会話の意図がいまいち掴めず
説明しろと、不満げな。
「あぁ これは一目瞭然。」
納得納得と。
木々の隙間から、甘い香りのする風がそよそよと吹いてくる。
その風に乗って、飛んでくるものがあった。
「・・ 桜の・・はな・・びらか?」
「あぁ。 だが現実のものではないらしい。」
手で花弁を受け止めると、桜の花弁はほのかな光を
放ち消えてしまった。
それは、現実の世界とは思えないほど幻想的な光景だった。
しばしそれに見とれていた一行だったが、
耳を澄ますと・・
『ギャォォォオオオオ』
「む、蟲の咆哮・・!」
「なんか久々って感じなんですけどぉ・・」
「は・・・ あっちにいるのかな」
顔を見合わせ合い、ひと息をつくと
とは口を同時に開く。
「行くぞ」
「行くわよ」
「「御意」」
「「りょーかい」」
桜の花弁の乗ってくる風をたどって、
白帝・黒帝両メンバーは山の奥へ、奥へとはいって行った。
*−*−*
この、甘い香りを俺は・・知っている。
この香りは、アノ人の匂いだ。
この香りは、言い記憶と悪い記憶をいっぺんに思い出させる。
笑顔にいつも癒されていた。 いつまでも一緒にいれるとおもっていた。
そして、最後に思い浮かぶ記憶は・・
『 ・・・・・』
鮮明すぎる紅い赤い朱い・・・ アカにうずくまっている・・
は、飛び起きた。
「・・・! ここは」
嫌な夢を見たと毒づき、汗ばんで息の乱れている自分に気づき自嘲する。
「俺も・・まだまだ女々しいな・・」
『起きたか』
「だ、誰だ!」
瞬時に、応戦体制に入るの手には銀色に光り輝く
フォークとナイフ。
『おぉ 怖いのう。その獲物を納めい。
妾はそちに危害などは加えないからの』
「・・姿を見せたらどうだ?」
『ふぉふぉっ・・ 警戒心だけは一人前のようじゃの。
上を見上げてみよ。』
言われたとおりに、上を見上げると桜の木の枝に子供のような影が見えた。
ストンと、数メートルの高さから降りたとは思えない身のこなしで
玖穏の前にあらわれた子供は淡いサクラ色の狩衣を着ている。
髪の色も、狩衣と同じ淡いピンク色だった。
さらに瞳は金色、肌は雪のような白さという人離れした容姿だった。
「・・・。」
『人の顔を見て、固まるでない。若造』
「若造って・・・」
『妾は、もう500の齢を超えている。 そちはいくつかのう?」
の頭の中に、ひとつ思い当たる節があった。
それは、精霊という存在だ。
数万年までまで、人に自らの力を貸し与えていた精霊は
地上が人々の力によって汚れていくにつれて姿を消していった存在。
「・・・ 精霊か?」
『正確には妾は精霊ではない。しかし精霊でもある。』
意味がわからないと言う顔をしたが、無視をされた。
と、「来るぞ」とその自称精霊ではないが精霊である・・ヒト?
が呟いた。
ハっとして周りを見ると、
「・・ 蟲!」
『蟲か・・ また面白い名前を付けたものよ』
カマキリの一体が、自身の鎌を振り上げ玖穏へと振り下げる。
ナイフとフォークをスパッと投げようとすると
『待て。 面白いものが見れるからのう』
「 え?」
−バチバチ
『ギャァァァアアアア』
「結界・・・?」
桜の木を中心として半円の結界のようなものが張られていた。
カマキリの鎌を跳ね返すほど、強力なもので玖穏は
スゴイ・・と知らず知らずのうちに呟いていた。
もう一度、こちらに向かって鎌を振り下ろそうとした
カマキリが、ズトンと地面にのめりこんだ。
頭の部分が、大きくへこんでいた。
近くには、大きくしたピコピコハンマーを持つ の姿。
「・・!先輩・・」
白帝・黒帝の共同線なだけあって、
カマキリ3体はあっけなく倒された。
そう。あっけなさすぎるほど。
『思ったよりもはやかったのう』
やれやれと、ひと息ついていると・・
「う・・ ウソでしょ・・・」
その場が凍りついたようだった。
「こ、こんな大きな蟲・・・」
見たことない。という言葉はその巨体を持った
カマキリの咆哮によって、かき消されてしまった。