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 林間学校も折り返しを、過ぎた3日目。

 残す期間も2日となった。

 

 3日目は、特に何もなく夕方を迎えた。

 夕飯のメニューは、焼きそば。

 それぞれがグループを作り、鉄板を持ってきて個人で焼くという

 システムであった。



 「皿を出せ。」



 両手には、二つのヘラ。

 鉄板の上には、美味しそうな煙を上げている焼きそばが・・

 黒帝生徒会のメンバーは、お皿を海響へと差し出す。



 「「「うま・・・」」」



 *−*−*



  一方、白帝の生徒会メンバーが囲む鉄板では・・



 「ちょ・・ 水多いですって。 壱葉先輩盗み食いしないでください」

 慣れていない手つきでヘラを両手に持った貴乃が、空にレクチャーを受けていた。

 壱葉の皿の上には、どこからもらってきたのかすでに焼きそばが盛られていた。



 「ぁー・・ う、うまく混ざらない・・」

 

 「こげちゃうよ! わたしたちの麺が・・」



 「ちょ、 麺ってせめて焦げた焼きそばって呼ばないと・・」



 鉄板を囲みながら、コソコソときらねと玖穏が話しているが

 明らかに貴乃には聞こえている。

 何故なら貴乃が、ヘラをガチガチ言わせ今にも玖穏へ投げつけようとしているから。



 『ヒュン・・』



 「あんたたち・・ 黙りなさい!」



 「「・・・。」」



  その後、空が手をくわえなんとかかんとか夕飯にありつけたそうな。



 *−*−*



  夕飯も過ぎ、ただいまの時間は夜の自由時間。

  玄関には、生徒会のメンバーが集まっていた。

  

 「第一回☆友情を深めろ! 夜の思い出ドキドキ肝試し大会を始めるで」



  ロウソクを持った、壱葉が嬉々として言いだす。

  しかし、周りの反応は薄かった。



 「ネーミングセンスないわねぇ。」



  と、貴乃。一見、興味なさそうだが楽しみにしているらしい。



 「・・・くだらなくありません・・?」



  あきれたと、言わんばかりの空はすでに諦めモード。

  右隣の、玖穏はすでにビクビクしている

  左隣りの干弥は、何かを企んでるような笑顔。



 「はぅ・・(眠い・・)」

  

  あくびを漏らす、海響。

 

 「伝説とかもあるし、少しは楽しめるかな・・」



  七乃花の言う、伝説とは「湖畔の万年桜」の伝説である。

  地図の上では、湖などないのだが万年桜に導かれたものはいつのまにか

  湖に行きついてしまう。

  ふと上を見上げると、大木の桜を目にする。

  そして、桜を目にしたものは桜に魅入られて帰ってくることはない。



  というのがおおむねの伝説である。



 「それじゃ、皆クジひぃてな」



  缶の中には、枝が入っている。

  一人ひとりが、引いていき二人組を作った結果・・



  トップバッターは玖穏・貴乃

  続いて、玲・悠詩のペア。干弥・きらねのペア。

  そして、最後のトリは空・七乃花のペアとなった。



 「ところで、 壱葉と海響と藍ちゃんはどうするの?」



  玖穏とペアになった貴乃が、ふと疑問に持った。

  口を開いたのは、藍華だった。



 「ふふ! 私達は驚かし役です!」



 「ぇ ・・・それってずるくない?」



 「トップバター行くでぇ。 貴乃と玖穏はロウソクもって・・」



  壱葉が玖穏に火のついた、ロウソクを持たせた。

  暗い森の中を照らす物は、これだけだ。

 

 「ぇ ちょ・・まちな「ほな 行ってらっしゃい」



  壱葉が、ニッコリと笑いながら貴乃の背中を押す。

  耳元でポツリと呟かれた言葉に貴乃は絶句したが、

  すぐに平常心を取り戻し、玖穏を引っ張って行った。





  『ー・・・ここの伝説は、あながちウソじゃあらへん。

    事実、3年前にも女の子が一人いなくなったんよ

     しかも、その女の子は白帝の生徒や 

     今回の森林学校の本来の目的はこれなんや・・

      3年前の真実のカケラを見つけなあかん。

 

        そして、今日はピッタリ同じ日や・・』




  
  



  
  
  
  
真実の欠片