16話

 



 食器を片づけ、部屋へと向かっていた白帝トリオ。

 すなわち、 久遠 空・雨崎 玖穏・椎名 干弥。



 「カレー美味しかったね〜」



 ケプと言いながら、満足げな表情の玖穏。

 

 「まぁまぁ だったね」



 「そんなこと言って、 一番おかわりしてたのひぃ君じゃん」



 クスクスと笑いながら、干弥のほうを向く空。

 干弥はプィとそっぽを向く。

 とそこへ、 後ろから猛ダッシュで走ってくる気配が。

 

 「なぁ なぁーーーーッ」



 赤い髪を、風にたなびかせ走ってくる阿保の子代表 紅林 壱葉。

 「とぅ」と言いながら、ジャンプ。

 勢いよく、空に飛びついた。



 「は、 ハレ?」



 と思われたが、空の姿はすでにそこにはなく玖穏の後ろにと移動していた。

 壱葉は、そのまま勢いよく床とコンニチワ。



 「ッツ・・・」



 ほんのり赤くなった額をこすっている壱葉。



 「なんですか? 壱葉センパイ」



 「なぁ 段々わいの扱い酷くなってへん?」



 「下手な関西弁風を使う、阿保なセンパイの扱いの基準ですよ」



 「ほぉ。 そんなことを言うのはこの口かッ」

 

 「やめへくらひゃいッ」



 「おぉ プニプニやな。」



 廊下のど真ん中で、男子二人が ほっぺたをつねったりつねられたりしている。

 

 ドコォッ



 「グフッ」



 どこからともなく空の武器・・ 大鎌が空の手に握られている。

 しかも先の柄の部分が壱葉のほっぺたにヒットしている。

 そのまま、壱葉は宙を舞い壁へと叩きつけられるところで

 足を壁に向けて蹴り激突を防ぐあたりが戦い慣れをしているのだろうと思われる。



 「痛いやん!」

 

 「僕も、ほっぺたがヒリヒリしてるんですがッ」



 「ストーーップ! ストップストップ!!」



 と、二人の間に玖穏が割って入る。

 

 「お風呂の時間が迫っています。 壱葉先輩も空君もそろそろ行かないと・・」



 干弥と玖穏の手には、いつのまにかお風呂セット。

 

 「あぁ。風呂か タオルとかとってこないと・・」



 我に返った空。 彼は何気にお風呂が好きで入浴剤にもこだわっている。



 「あぁ。 ついでにもってきちゃったけど・・ はい」



 「お 準備がいいな。 助かった」



 「えへへ」



 すると、空のポケットからいちごミルク味の飴が2個取り出された。

 そのまま、玖穏の手のひらへ



 「なんか餌付けみたいやな・・」



 「真実そうでしょう。」



 そういう干弥の、ポケットにも空のいちごミルク味の飴が数個入っていることを

 壱葉は知らない。



 「それにしても・・ 風呂の後は浴衣・・ 面倒だな」



 そう。 

 風呂の後は渡された浴衣を着るようにと言う理事長直々の知らせが達せられている。

 男子は、青い浴衣。 女子は赤い浴衣。

 

 「・・・ ここにいたのか」



 廊下から来たのは、空たちと同様に風呂セットをもった海響と悠詩だった。

 ようするに、両生徒会の男子メンバーがそろったことになる。



 「一般生徒達は、すでに入浴が終わった。残ったのは我らだぞ」



 「女子たちはさっき、キャーキャー言いながら入っていきましたんで」



 「ほな、 行こうか」



 「ですね」



 男子達は、それぞれ風呂セットを持ってゾロゾロと風呂場へと向かっていた。

 その頃の 女子メンバー達はと言うと・・



 「広〜〜い!」



 「本当ですねー」



 「はぁ いい湯だなー」



 「ちょっと 市原は隣の風呂でしょうが」



 広い浴槽の中で、のびのびとお湯につかっていた。

 

 「はぁ? ざけんなよー俺も生物学上は女に属すんだよ」



 「ハッ そのまな板で何を言う」



 鼻で笑い、腕を組んでいる貴乃。



 「そーいう貴乃ちゃんも十分まな板だと思うよ?」

 

 歳の割に、大人な体型のきらね。

 出ているとことは出てるが、ひっこんでるところはひっこんでる体型。

 ようするに ぼんきゅぼん。



 「ッるさい! きらねが異常なのよ」



 ザバッと、立ち上がり周りのメンバーを見る。

 玲に関しては、ツルペタだが 七乃花についてはいたって平均的であった。

 そして、藍華に目が行った。



 「・・・・ッツ」



 悔しそうに唇をかんだ、貴乃。



 「藍華ちゃんで着やせするタイプなのね・・ 意外とでてる」

 後ろから、ぬぅっと身を乗り出す七乃花。



 「な、なんですか!」



 ジリジリと、七乃花と貴乃が端へと藍華を追い詰める。



 「えっへへへ・・」



 「ふふふッ」



 「ぇ ちょ ってきゃー?!?!」



 藍華の悲鳴が、風呂場に響き渡った。



 *−*−*

 

 「「「・・・・」」」



 「なんだ?」



 海響が、服に手をかけ脱いでいくところをマジマジと見入っている

 壱葉・悠詩・玖穏。



 「華奢だな・・」

 「しかも白い・・」

 「相変わらずやねー」



 ベタベタと海響の体に手をつける壱葉。

 そんなことはお構いなしに、 空と干弥はどんどん風呂へと入っている。



 「こしょばゆいからヤメロ。 さっさとお前らも入れよ」



 服を脱ぎ終わり、風呂場へと悠々と歩いて行く海響。



 「へ 待ってや アオト!」



 服を脱ぎ棄て、海響の方へと行く壱葉。

 

 「後姿だけ見てたら・・ まんま女子に見えたのは俺だけか・・」



 「いや。 僕も見えた・・・」



 残された、悠詩と玖穏は顔を見合わせた。



 湯船につかり、壱葉が唐突に口を開く。



 「なぁ 知っとるか?」



 「何をですか」



 「・・・ここには、幽霊の伝説があるんや!」



 「ゆ、ゆゆ幽霊ですか」



 ビクビクとし始めた玖穏。

 

 「また。 くだらない・・」



 呆れたと言うように、空は湯船から出て脱衣所へと歩いて行く。

 それに、賛同してか干弥と海響までもが歩いて行く。



 「なんやねん 皆してぇ 少しくらいはわいの話も聞いてくれたってもええやん!」



 「そーいう系の話なら、俺の妹が付き合ってくれますよ」



 挙手したのは、悠詩。

 妹と言うと、七乃花となる。



 「七乃花ちゃんがか?」

 

 「えぇまぁ・・」



 空が、振りかえり一言。

 

 「玖穏。 のぼせる前に出ろよ」



 「ん・・ぃ・・」



 「ぁー ダメだコイツ。 もうのぼせてる。」



 悠詩が、玖穏の顔を覗き込む。

 肩を組み、ヨロヨロしながら脱衣所へと向かった。

 壱葉も流石に一人は嫌なのか一緒に出た。



 *−*−*



 「やぁっと出てきたの?」



  赤い浴衣を着て、腕を組んだ仁王立ちの貴乃がいた。

  スパーンと少し行った先の小部屋から音がした。

  「こっちよ」と言いながら貴乃が男子メンバーを引き連れていく。

  

  その先には、 卓球に白熱した玲と藍華の姿があった。

  

  「はぁぁああッ 俺様スマッシューッ」



  「甘いッ」



  ゴォォッ スパーーン



  「私の・・ 勝ちです!」



  「な・・・ クッ・・」

 

  悔しそうに、玲が立ち上がりどこかへ走って行った。

  数分後、アイスを持って戻ってきた。

 

  「ほらよ」



  「わーい。 有難うございます〜♪」



  藍華の新たな一面を見た、男子軍であった。

  
  
  
  
  
  
     
  
     
  
  
  
  
  
  
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