14話

 第1班。



  「はぁ。 面倒だな・・」

  

  「しょうがないでしょぉ。 ひぃくんも嫌ぁなのにぃ」



  「まぁ まぁ。 進みましょうよ。」



  地図を広げて、ルートを確認しつつ進む一向。

  第一班 悠詩・藍華・干弥の3人である。

  生徒会内で、比較的常識のある3人は道をずれることなく 

  進んでいる。 愚痴は多いが。

  

  「万年桜なんて嘘っぽいなぁ・・ もぅ信憑性を疑っちゃうよねぇ」

 

  この、林間学校の森の伝説 「湖畔にたたずむ 万年桜」

  桜の名を 「紅桜」 



  「まぁ 伝説ですからね。 あったら中々に楽しめますが・・」

 

  クスクスと笑いながら、前を進む悠詩とはぐれないように歩く藍華。

  

  「まぁ 桜と言ったら王道の・・・」



  「「「根元には死体がある。」」」



  3人の発言がぴったりとシンクロする。

  顔をそれぞれ見あわせ、笑い始める。

  少し進むと、大きな木が倒れている。

  それを見た3人は、休憩をとることにした。



  「はぁ。 流石に疲れますね。 他の人たちは大丈夫でしょうか・・」



  *−*−*



 第2班



  「・・・。 ここは何処や?」



  「森の中だ。」



  第2班 海響・壱葉。

  

  現状はと言うと遭難中。

  

  「なんでや? ・・・ 漫画じゃぁ木の枝を倒した方向に進めば

   殆どが結果オーライで目的地に着くはずなんやのに・・」



  原因は、森に一歩入ったところで壱葉が進む方向は

  この枝にかかっとる! 行くぞこっちだぁ

  という感じに、海響を引っ張っていってしまったからである。

  その間の海響は、されるがまま。

  基本的には、面倒くさがりやな気質がここで発揮された。



  「はぁ・・・ とりあえず こっちだ。」



  壱葉を置いて、一人で木の間を進んでいく海響。

  

  「お、おおお置いていかんといてぇぇええ」



  さらに歩調を速め、完全に壱葉を遊んでこの暇を埋めようとしている。

  壱葉はまんまとひっかかり半べそをかきながら必死に

  海響を追いかけて行った。



  *−*−*



 第3班



  「行きますよ・・ って聞いてます?」



  第3班 七乃花・きらね・空。

  3班は、未だに最初の旅館の敷地から出ていなかった。



  「行こうか!」



  「えぇ。 そろそろ出発しないと逝けませんからね」



  七乃花に向かって、ドス黒い視線をむけるきらね。

  しかし、その視線には気付かない 七乃花。

  背後で、黒いものを感じた空は悪寒を感じていた。



  「(い・・ 今の、桐野副会長の行くの字の意味が違った気がした

    ・・ 気のせいだな。 うん気のせいッ)」



  無理やり、自分の思考をストップさせ我関せずの態度を貫く

  ことにしたらしい 空。



  「じゃぁ レッツ Go!」



  先頭が七乃花 真ん中がきらね 最後が空

  の順番で並び、やっと出発を始めた3班。

  しかし、きらねのドス黒ものはしまわれることがない。



  もぅ諦めて、森林欲を楽しむように歩く空。

  

  空が気付かないところで争いは始まっていた。



  「七乃花さん(ッチ この際ここで沈め・・いけない空君がいる)」

  「ん? 呼び捨てでいいよ。タメでしょ?」

  「ぁ じゃぁ 七乃花でいい? 

   私のことも呼び捨てでいいよ(様つけしてほしいわね)」

  「ん。 了解ッ きらね・・ ちゃんでいいかな」

  「うん。 よろしくね(誰かよろしくすかッ)」



  きらねサン。 本音がチョロっと出ちゃっているようですが

  七乃花は気付かない。

  一方的な、争いが始まってる。

  

  「(はぁ・・ 他もこんな感じだろうか・・)」

  空が、心の中でポツリと呟いているとき、



  *−*−*



  第4班



  「この際、ここで決着つけましょうよぉ」

  

  「いいな。 こっちこそ、ここで白黒つけてやるッ」



  「ちょ こ、こんなところでやめましょうよ・・」



  「「あぁ?」」

  

  「な、なななんでもないれふ」



  最初のわかれ道の標識で、火花を散らすのは

  第4班 玲・貴乃+睨めつけられた玖穏。

  この3人が4班である。



  「ずぅえったぁぁぁいに・・ 右よ!」



  「ハッ 左に決まってんだろ?」

 

   「右!」 「左だ!」 

 

   「ぜったいに 右なんだから!」

   「絶対に左だ!」



   

  という、言い争いがもぅ15分続いている。

  その間、玖穏はと言うと、一人でオロオロしていた。

  割って止めに入るほどの勇気はない。

  だって この二人はある意味無敵の部類に入るからだ。

  かたや、(こんなでも)白帝会長。

  かたや、 黒帝副会長。

  

  ついに、両者は武器に手が伸びる。



  「今のうちに、俺に謝っとけば手加減してやってもいいぜ?

    チ・ビ・白帝生徒会長サ・ン」



  「ハッ? あんたこそ今に痛い目にあうわよ!

    貴乃様許してぇなんて言ってもやめないから。この男女」



  今にも、殴り合いを始める勢いで二人が睨め合っている。

  玖穏は、看板の下に座り傍観者となっている。



  「先手必勝ッ 水衝刃<スイショウジン>」



  玲が、己の武器である青みがかった洋剣を地面に

  勢いよく叩きつけた。

  突如、水の衝撃波が貴乃に向かって起きる。

  しかし貴乃もそれを見越していたらしい。

  防御の体制に入っていた。

  

  「甘いわね。 こちらからも行かせてもらうわ 爆烈炎燭<バクレツエンショウ>」



  水の衝撃波で起こった、土煙がまだ上がっている

  玲には、貴乃の姿が見えない。

  そこに、貴乃のチャクラムが焔をまとって飛んできた。

  爆烈炎燭<バクレツエンショウ>は、貴乃自身の武器である

  チャクラムに焔をまとわせて、ぶつかった障害物がすべて爆破する

  といった技だ。



  「ウワッ あっぶねぇ・・」



  それを、紙一重で避けた玲。

  チャクラムは、玲の真後ろにあった大きな岩にぶつかった。

  大きな岩は、突如爆破。

  飛び散った石の破片が宙を舞う。



  「きゃぁッ」

  「ぇちょ・・・『ガツン』 ツッ・・」



  ひょいひょいと持ち前の運動神経で避ける玲。

  さらにきゃぁきゃぁ言いながらもしっかり避ける貴乃。

  流石に場数を踏んだ経験が違う。

  

  しかし、油断していた玖穏に避けることなどできなくて・・

  少し大きめの破片が、額に的中した。



  「な、 なんで・・ 俺ばっかり・・」



   災難な玖穏クンでしたとさ。



  −−−−−−−−−−−−−−−−

  

  夕方・・ PM5:00

 

  『キーンコーンカーオーン。

    黒帝・白帝両校生徒に次ぐ。

     5:00になりましたので、帰ってくるよーに』



  理事長自らの放送。

   

  直後、ゾロゾロと生徒達が帰ってくる。

  みな、それぞれ楽しそうに笑っているもの

  かたや、涙で顔がゆがんでいるもの、 黒い気配をまだしまっていないもの

  等々がいる。



  「今日の夕飯はカレーだよぉー」



  そぅ。 その一言が悲劇もとい喜劇の始まりの合図・・



  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
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