〜 12話 〜 「 黒帝の眠り姫 」


  海響の部屋に、空と藍華が走りこんでくる瞬間。

  食堂では、ほとんどの生徒が食事をとっていた。



  本日のメニュー。

  白米・卵焼き・味噌汁・漬物。

  

  箸で、それらを不満そうに食べている生徒が一人。



  「私の朝ごはんは、食パンのトースト マーガリン蜂蜜すぺしゃる

   って決まってるのに・・・・」



   白帝、生徒会長の証である腕章を左腕につけた貴乃でした。



  「僕は、いつもこんな感じの朝ごはんですけどね・・」



   ふぅわぁ とあくびをしながら、朝食をトレーに乗せた玖穏が

   やってくる。 髪がところどころ寝ぐせでハネている。



  「量が足りんわぁー。 貴乃のちょみっちわいにくれぃ」



   白米を、すでに3杯食べているのに貴乃のおかずに手を出そうとする壱葉。

   

  「・・・・ ダメ。 自分の分があったでしょう・・」



   味噌汁をズズズと飲み込んでいる 貴乃。



  「壱葉先輩。 わたしの食べてください。基本朝食食べないんです わたし」



   貴乃の横で、きらねが壱葉にむかっておかずの乗った皿を差し出す。



  「ぉー 助かったわ。 米だけじゃ寂しいからのぅ」

  

   卵焼きを箸で、取って自分のお茶碗に入れる。



  「ぁー 白帝の皆さんだ。 おはようございまふ・・」



   後ろから、 黒帝の七乃花と玲が朝食を持ってくる。



  「うぅ。 眠みぃ・・・」



   玲は、起きたばかりらしく髪がまだ結われていない。



  「おはよーさん。」

  「おはようございます」



  

   まだ食堂にやってこないのは、干弥・悠詩・海響・藍華・空の5人。



  「ひゃうわ。 寝坊しちゃいましたぁ」



   と干弥。 髪は寝ぐせでボサボサ。

   

  「おはよーさん。 まだセーフやよ。 ひぃくん」



   口に、卵焼きを含みながら味噌汁に手を出そうとする壱葉。



   全員が、一通り朝食を食べ終わった頃。



  「それにしても・・・ 久遠家は朝が弱いんですか?」



   と玖穏。 お茶を飲んで一息ついている。



  「いや。 空と藍華は普通なはずだ。 遅いとしたら海響が起きないからだな」



   髪の毛を縛りながら答える 玲。



  まわりの女子からは、黄色い声がひっそりと聞こえるが誰も気にしない。



  「海響会長の寝顔が見てみたい・・ 素がいいから萌そうだわ・・」



  ボソッと呟いた七乃花の声を聞いたものはいない。



  「悠詩もいないか・・・」



  「そーいえば。」



   そーいえばってお前なぁと言いながらお茶漬けすすっている玲。

 

  「確か・・・ さっき海響会長を起こしに行かないと・・とか言ってたような」



  「「「ぁー ご愁傷様」」」



   貴乃・壱葉・玲 3人がハモった。

   海響の寝像を知らない、干弥・玖穏・きらね・七乃花はきょとんとしている。



   しかし、寝像を知らない4人は悟った。

   おそらく、寝像がかなり悪いのだろうと。



  

   7人が、のんびりと朝食を食べ終わり一息つき終わったころに

   ようやく、 海響・藍華・空・悠詩が食堂にやってきた。



  「「「おつかれさん(様)」」」



  「「いぇいぇ いつものことです。」」



   空は、のほーんとしている海響の片手をひっぱり椅子に座らせる。



  「「「・・・・・・。」」」



  普段は、ほとんど表情が変わることのない海響がのほーんとした

  顔は、 周りの女子に卒倒するものが出るくらいのものだった。



  「やっぱ・・・ 萌える・・」



   ボソッと呟く七乃花の声はやはり誰の耳にも届きはしない。



 



   朝から個性の強い生徒会諸君。

   しかし、林間学校はまだまだ始まったばかり。

   さぁ。 いざ行こう! 森の中へ。
  
  
  
  
  
  
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